公開部門委員会
表面改質材の損傷と残留応力

企画

疲労部門委員会,X線材料強度部門委員会合同

会場

高知工科大学永国寺キャンパス

日時

平成30年5月25日(金)13:00〜16:50

趣旨

「表面改質材の損傷と残留応力」と題し,疲労部門とX線材料強度部門の合同で公開部門委員会を企画いたしました.疲労強度と残留応力には密接な関係がありますが,学術的にも解明すべき課題が多く残されています.とりわけ表面改質材では初期の残留応力状態に加えて,疲労負荷過程中の解放挙動が重要となります.そこでこのたびの公開部門委員会では,疲労部門委員会から推薦された菊地先生には表面改質材の疲労特性評価に関するご講演をいただきます.また,X線材料強度部門委員から推薦された佐野先生,平野先生には大型放射光施設SPring-8で実施されたご研究についてご講演いただきます.最後に総合討論を行い,現状の課題の抽出と解決への糸口を見出すための議論の場を設けます.さらに,本企画を通じて両部門委員会の連携を深め,材料研究拡充および深化の機会にしたいと思います.両部門委員会委員の方々および本テーマに興味を持つ幅広い分野から多数の皆様のご参加をお願い申し上げます.

プログラム

  1. 13:00〜13:30 疲労部門委員会ビジネスミーティング
  2. 13:40〜16:50 講演および討論

(1) 13:40〜14:30

表面改質により生起した圧縮残留応力の解放挙動と疲労特性に及ぼす影響

静岡大学 菊池 将一 氏

材料表面に圧縮残留応力を生起させる表面改質は,金属材料の疲労特性改善に有効である.そのため,表面改質によって高い圧縮残留応力を付与するための研究が盛んに行われているが,疲労負荷過程において圧縮残留応力は解放(減衰)することがある.本発表では,高周波焼入れや微粒子ピーニングを施した低合金鋼(SCM435Hおよび40CrMo8)を対象に,表面改質条件と生起する圧縮残留応力値の関係に関する検討結果,および疲労負荷過程における残留応力の解放挙動を考慮した疲労特性評価に関する検討結果について紹介する.また,発表者が幹事を務める疲労部門委員会「疲労に関する表面改質分科会」で実施している表面改質材の疲労特性評価に関する取り組みについても紹介する.

(2) 14:40〜15:30

ドライレーザピーニングによるアルミニウム溶接継手の疲労特性向上:放射光X線による非破壊ひずみ計測とXFELによる動的ひずみ計測

大阪大学 佐野 智一 氏

発表者らは材料の疲労特性を向上させる新しい手法であるドライレーザピーニング法を開発した.ピーニング手法としては,ショットピーニングやナノ秒レーザによるレーザピーニング手法が既に実施工で用いられており,非常に有用な手法であるが,非接触で水などの犠牲層を用いず,直接材料に応力を負荷することによってピーニング効果を付与させる手法はこれまで存在しなかった.発表者らは,ピーニングの駆動源としてフェムト秒レーザを用いることによって,これを可能とした.本発表では,本手法によって得られる機械的特性の向上,アルミニウム溶接継手への適用例,放射光X線による非破壊ひずみ計測結果とXFELによる動的ひずみ計測結果に基づく本手法の機構について紹介する.

(3) 15:40〜16:20

リチウムイオン実電池内部の温度・応力のオペランド計測

京都大学 平野 辰巳 氏

車載用リチウムイオン実電池(LIB)のサイクル時の劣化要因として,高い電流レートにおける電池内部の温度上昇,リチウムイオンの正負極間移動にともなう電極の膨張・収縮による応力などが指摘されている.そこで,小型のLIB内部における温度・応力分布を同時に評価する手法を検討した.入射スリットとスパイラルスリットにより測定ゲージ体積を制限し,高感度な二次元検出器により回折X線像の一部を撮影し,sin2ψ法により解析した.その結果,小型のLIB内部における温度・応力を同時に評価するオペランド計測と解析が実証でき,その内容を紹介する.

3. 16:25〜16:50 総合討論