2009年度

 

(社)日本材料学会 技能検定試験

 

技能種別:疲労試験

 

 

 

 

 

 

2009年9月25日(金)

15:00-16:45

日本材料学会 3階 会議室

 

1級受検者は全問解答し、2級受検者は

問1〜問16のみを解答すること。

 


【問1】 下記文中の空欄(a)(d)に当てはまる最も適切なものを,(1)(5)の中から選択し,解答せよ.

 

試験片に垂直応力の繰返しを負荷でき,任意の応力波形や平均応力を容易に設定できる疲労試験法として適したものは   (a)   である.この試験法により,R = 0である完全片振り試験を行うには,平均応力を応力振幅の   (b)   倍になるように設定する必要がある.この試験法は,高サイクル疲労のみならず,低サイクル疲労にも適用されるが,特に低サイクル疲労試験を行う場合は   (c)   制御として実施することが望ましい.なお,疲労試験を実施する際の繰返し速度を速くしすぎると,試験片の温度が   (d)   する可能性があるので,注意を要する.

 

 

(1) (a) 回転曲げ疲労試験

(b)  -0.5

(c) 応力

(d) 低下

(2)  (a) 軸力制御疲労試験

(b)  1

(c) ひずみ

(d) 上昇

(3) (a) 平面曲げ疲労試験

(b)  0

(c) 応力

(d) 低下

(4) (a) ねじり疲労試験

(b)  -1

(c) ひずみ

(d) 上昇

(5) (a) 軸力制御疲労試験

(b)  0.5

(c) 応力

(d) 低下

 

 

 

 

 

 

 

【問2】電気油圧サーボ式軸力制御試験機を用いた疲労試験を行うに際して,試験機の油圧源のポンプを始動し,制御をサブコントロールにして試験片を試験機に装着し,試験開始前の温度と湿度を計測した.それ以降の試験手順として最も適切なものを,(1)(5)の中から選択せよ.

 

  (1)      (a) (b) (c) (d) (e) の順

  (2)      (a) (c) (d) (e) (b) の順

  (3)      (a) (d) (b) (e) (c) の順

  (4)      (d) (a) (c) (b) (e) の順

  (5)      (d) (a) (b) (e) (c) の順

 

なお,上記アルファベットの記号の表す内容は以下のとおりである.

 

   (a) 制御装置を始動させ,所定の繰返し負荷を試験片に加える.

   (b) 試験片が破断した後,制御をサブコントロールに切り替えて,アクチュエータを最下部に下げる.

   (c) 油圧源の圧力を0にし,油圧源のポンプを停止する.

   (d) 制御をメインコントロールに切り替える.

   (e) 下側破断試験片,上側破断試験片の順に,それぞれ試験片をつかみ具から取り外す.

 

 

 

【問3】同一の公称応力条件下で行う各種疲労試験において,一般的な疲労強度の大小関係が正しいものを選択せよ.

 

(1)  JIS丸棒1号試験片の回転曲げ>JIS丸棒1号試験片の引張圧縮

(2)  直径の太い試験片の回転曲げ>直径の細い回転曲げ

(3)  表面粗さの大きい試験片の回転曲げ>表面粗さの小さい回転曲げ

(4)  JIS環状Vみぞ付き試験片の回転曲げ>JIS丸棒2号試験片の回転曲げ

(5)  普通熱処理材の引張圧縮>浸炭熱処理材の引張圧縮

 

 

 

 

 

【問4】 降伏応力1500MPa,引張強さ2000MPaの材料で両振りの引張圧縮疲労試験を行ったときの疲労限度は800MPaであった.この材料に150MPaの平均応力を作用させて引張圧縮疲労試験を行う場合,その疲労限度を修正グッドマン線図で推定するとどれくらいになるか.以下から選択せよ.

 

(1)  795.5MPa

(2)  780MPa

(3)  760MPa

(4)  740MPa

(5)  720MPa

 

 

 

 

 

【問5】砂時計型試験片のような平行部のない疲労試験片を用いてひずみ制御疲労試験を実施する場合には,径方向変位を計測・制御して行う.最小断面部の直径d=8mmの試験片で軸方向応力範囲Ds=800 MPa負荷したとき径方向の変化幅Dd0.004mmであった.径方向ひずみ範囲Dedと軸ひずみ範囲Deを求めなさい.ただし,弾性定数E=206 GPa,弾性変形におけるポアソン比ne=0.3とする.

 

(1) Ded=2.5x10-3De=5.5x10-4 

(2) Ded=2.5x10-4De=1.5x10-3 

(3) Ded=5x10-4De=5.5x10-4 

(4) Ded=2.5x10-4De=3.0x10-4 

(5) Ded=5x10-3De=5.5x10-3 

 

 

【問6】同一形状の合金鋼試験片5本を用い,同一応力振幅σa = 650MPaにて疲労試験を行った.その結果,表に示す破断繰返し数を得た.試験片番号No.1~No.5の各試験片の破断確率を,メディアンランク法を用いて計算した結果で,正しいものは以下のいずれか.番号を示せ.

 

     試験応力振幅:σa = 650MPa

試験片番号

No.1

No.2

No.3

No.4

No.5

破断繰返し数

Nf(×105

1.0

2.1

5.3

3.8

4.2

破断確率F

F(No.1)

F(No.2)

F(No.3)

F(No.4)

F(No.5)

 

 

 

 

 

 

 

           F(No.1)  F(No.2)  F(No.3)  F(No.4)                F(No.5)

(1)      0.13        0.31        0.87       0.5       0.69

(2)      0.1          0.3          1.0         0.6       0.8

(3)      0.1          0.34        0.5         0.6       0.8

(4)      0.2          0.4          0.6         0.8       1.0

(5)      0.17        0.33        0.83       0.5       0.66

 

 

【問7】金属材料の疲労破面の特徴に関する以下の記述の中で間違っているのはいずれか?該当する番号を示せ。

 

(1)      疲労破面は負荷方向(主応力方向)に垂直な平面状に進展する傾向があるが、進展の中盤以降において表面近傍でせん断型破壊に起因するシャーリップと呼ばれる傾斜部を呈することがある。

(2)      疲労破面には繰返し負荷の1回ごとに進展したき裂前縁に対応するストライエーションと呼ばれる条痕が形成されるが、このストライエーションは一般に鉄鋼材料より延性を備えたアルミニウム合金の方が鮮明に現れる。

(3)      疲労破面上にはき裂進展速度が途中で変化することにより砂浜の波模様(ビーチマーク)、あるいは貝殻状模様(シェルマーク)が形成されるが、このような模様は肉眼では見えないので、SEM等の顕微鏡を用いて観察される。

(4)      ストライエーション間隔は、その時点でのき裂進展速度を与える。

(5)      疲労き裂進展初期に比較して、進展の後期段階ではき裂進展速度が高くなり、破面の凹凸は一般に増大する傾向がある。

 

 

 

【問8】以下の説明について、間違っているのはいずれか。その番号を示せ。

 

   (1)      疲労限度は鉄鋼材料で顕著に現れるが、非鉄金属では必ずしも明確な疲労限度が現れないことが多い。

   (2)      疲労強度の寸法効果として、試験片のサイズが大きくなるほど疲労強度は低下するが、この傾向は寸法が大きくなるほど緩やかになる。

   (3)設計の立場からすれば、疲労限度線図における修正グッドマン線は、ゾーデルベルク線より安全側の基準を与える。

   (4)コフィン−マンソン則の式中に現れる刄テpは、繰返し応力−ひずみ線図のヒステリシスループにおける横軸上の交点間の幅を意味する。

   (5)疲労破面上で観察されるストライエーションとは、疲労き裂が繰返し負荷の1回ごとに進展したき裂前縁の痕跡として形成される。

【問9】JIS B7721「引張・圧縮試験機−力計測計の校正・検証方法」において規定されている試験機の力計測系に関する検証法として,誤っているものを以下の中から1つ選んで番号を示せ.

 

   (1) 真の力を測定する手段として、JIS B7728に規定された力計を用いる。

   (2) 力計と試験機の力指示計表示の記録は、測定範囲の0〜100%間を5分割以上した力レベルで行なう。

   (3) 検証を行なう環境(周囲)温度は、10〜35℃の範囲とする。

   (4) 油圧式試験機の場合は、油圧ピストン位置による差を把握するため、4箇所以上の異なるピストン位置で測定を行なう。

   (5) 力計と試験機の力指示計表示の記録は、測定範囲の0〜100%間を3回繰り返して行なう。

 

 

 

【問10】疲労試験機の維持管理に対する説明として正しいのは、次の内のいずれか。その番号を示しなさい。

 

   (1) 疲労試験機については動的荷重に関する検定の規格がないので、静的荷重検定を行っていれば良い。

   (2) 試験機運転中にいつもとは異なる音がしているが、アラームランプが点灯していないので、そのまま試験を行った。

   (3) 相対繰返し誤差を評価したところ、1.8%であった。この結果はJIS B 77212級に相当し、金属材料試験機として適切であるといえる。

   (4) 荷重検定を行う際に力計を使わず、おもりで荷重を与えた。

   (5) 荷重検定は疲労試験の都度行う方が良い。

 

 

 

【問11】安全規範として正しいものを,以下の(1)〜(5)から1つ選択し,番号を示せ.

 

   (1) 作業者や周囲の人間の安全確保が基本的に最も重要である.

   (2) 試験機計測作業における直接的な三大戒めは,「整備万全」,「操作確認」および「巻込まれ注意」である.

   (3) 試験装置を使用する職員を特定して登録するとともに,装置に使用する職員の名前等を明示しなければならない.

   (4) 安全上の問題がなければ,夏季においては作業服の袖まくりをしても良い.

   (5) 非常停止装置のボタンは,目立つ位置に設置されているが,色が赤色とは限らないので,装置使用前に必ずボタンの位置を確認する.

 

 

 

【問12】試験作業を安全におこなうため、服装および保護具は重要である。以下の文でふさわしくない状態はどれか。

 

  (1) 安全帽にひび割れがあったので交換した。

  (2) 爪先を保護するため安全靴を着用した。

  (3) 切屑が飛散する作業をおこなうためゴーグルタイプの保護眼鏡を使用した。

  (4) 機械に巻き込まれることを防ぐため、作業前に袖口のボタンを確認した。

  (5) 手袋をはめて作業し、そのままハンマーでたがねを打つ作業をした。

 

 

 

 

【問13】引張圧縮疲労試験などで用いられる電気油圧サーボ疲労試験制御装置の保守点検として不適切だと考えられるものを選び、その番号を示せ.

 

   (1)      日常の手入れとして,1ヶ月に1度程度は電源を入れて動作を確認する.

   (2)      ほこりなどから制御装置を保護するため,使用しないときはカバーを掛けるなどの配慮をすること.

   (3)      コネクタ,端子盤およびスイッチなどの点検を5年に1度程度実施すること.

   (4)      ケーブルは繰返し曲げられたり,腐食したりして断線することもあるので点検し,断線した箇所あるいは,断線しそうな箇所があれば接続しなおす.

   (5)      端子盤をチェックし,腐食していればその部分を軽く研ぎアルコールで清掃する.

 

 

 

 

【問14】 100kgfの引張り力を受ける直径10mmの丸棒に発生する垂直応力σの値は以下のどれか、番号で答えよ。

 

  (1)  1.27MPa

  (2)  12.7MPa

  (3)  127MPa

  (4)  1.27GPa

  (5)  12.7GPa

 

 

 

 

 

 

 

【問15】図のように左端が固定されている長さl1=200mm、直径d=20mmの棒abの右端bに垂直下向きに負荷P=500Nが加わっている。このときa点に生じる最大曲げ応力の値は以下のいずれか、番号で答えよ。なお、棒の縦弾性係数はE=200GPaである。

 

(1)  398kPa

(2)  25.0MPa

(3)  79.6MPa

(4)  127MPa

(5)  398MPa

 

 

 

 

【問16】直径d=15mm、長さL=500mmの丸棒に2kNの引張力Pを加えた。丸棒の材料のヤング率E=200GPa、ポアソン比ν=0.3であり、丸棒の変形が比例限度内であるとき、この丸棒の直径の減少量δを求めよ。

 

(1)      0.255 μm

(2)      12.7 μm

(3)      25.5×10-6 m

(4)      12.7×10-3 

(5)      2.55 nm

 

 

 

*******(2級受検者はここまで/1級受検者は最後まで解答)********

 

 

 

【問17】引張強度sB=588 MPa(60 kgf/mm2)の平滑材の両振り疲労試験を実施し疲労限度sw=300 MPaを得た.同じ材料を用いて環状V型切欠き付き丸棒(切欠き半径r=0.5mm,切欠き角度q=p/2,試験片直径D=10mm,最小断面直径d=8mm)の回転曲げ疲労試験を行った.切欠き材の疲労限度はいくらと推定されるか.日本機械学会計算図表から算出される切欠き材の切欠き係数Kfと疲労限度swkの正しい組合せを以下の中から選択せよ.

 

(1)  Kf=1.54swk=462 MPa

(2)  Kf=1.54swk=195 MPa

(3)  Kf=1.69swk=507 MPa

(4)  Kf=1.69swk=178 MPa

(5)  Kf=1.09swk=327 MPa

 

 

【問18】応力振幅をsa,破断繰返し数をNfとしたときSN曲線が,sa11×Nf=1032で表され,疲労限度がsw=250 MPaである材料に表のような3段繰返しプログラム応力が負荷されている状態を考える.マイナー則および修正マイナー則を用いて破断ブロック数の正しい値の組合せを(1)(5)の中から選択せよ.それぞれによる予測値をNDNMDとする.

 

応力振幅sa (MPa)

1ブロック中の繰返し数ni

350

8

280

300

230

5x103

 

(1)  ND=307 ブロック,NMD=205 ブロック

(2)  ND=205 ブロック,NMD=307 ブロック

(3)  ND=125 ブロック,NMD=307 ブロック

(4)  ND=205 ブロック,NMD=122 ブロック

(5)  ND=307 ブロック,NMD=125 ブロック

 

 

 

 

 

 

【問19】弾性定数E=206 GPaの材料を用いて,平行部の直径D=8.0mm,標点間距離l=25.0 mmの中実丸棒疲労試験片を作製した.この試験片を用いて標点間距離の変位lを制御し,標点間部分の全ひずみ範囲De0.8%となる低サイクル疲労試験を実施した.この時,負荷力と変位のヒステリシスループを測定すると負荷力範囲DP41.5kNとなった.標点間部分において制御すべき変位範囲Dlならびにヒステリシスループを測定した時点での応力範囲Ds,塑性ひずみ範囲Depの値の正しい組合せを以下の中から選択せよ.

 

(1)  Dl=0.2 mmDs=825 MPaDep=0.004

(2)  Dl=0.2 mmDs=52 MPaDep=0.0077

(3)  Dl=0.064 mmDs=52 MPaDep=0.0077

(4)  Dl=0.2 mmDs=825 MPaDep=0.012

(5)  Dl=0.064 mmDs=825 MPaDep=0.004

 

 

 

 

 

 

 

 

【問20】ある鉄鋼材料のき裂進展速度da/dN (m/cycle)と応力拡大係数幅DK (MPa×m1/2)の関係式であるパリス則を求めたところ,以下の関係式が得られた.

 

  da/dN=C(DK)m  C=6.0x10-14m=4

 

負荷応力幅Ds=250 MPa,き裂長さa=15 mmの疲労き裂の応力拡大係数幅とき裂進展速度の正しい組合せを以下の中から選択せよ.応力拡大係数はで与えられるものとする.

 

(1)  DK = 1716.2 MPa×m1/2da/dN=5.2x10-1 m/cycle

(2)  DK = 54.3 MPa×m1/2da/dN=5.2x10-7 m/cycle

(3)  DK = 1716.2 MPa×m1/2da/dN=5.2x10-4 m/cycle

(4)  DK = 54.3 MPa×m1/2da/dN=5.2x10-4 m/cycle

(5)  DK = 54.3 MPa×m1/2da/dN=5.2x10-1 m/cycle

 

 

 

【問21】ビッカース硬さが170 HvのS45C焼きなまし材に直径d (µm),深さd/2(µm)の半球状の微小欠陥がある.この欠陥が疲労強度を低下させるのは,欠陥の直径がどの程度以上の場合か番号で答えよ.

         

  (1)  5 µm

  (2)  10 µm

  (3)  15 µm

  (4)  20 µm

  (5)  25 µm

 

 

 

【問22】き裂開閉口挙動について,正しいものを以下の(1)〜(5)から1つ選択し,番号を示せ.

 

   (1) 疲労き裂は引張力を受けると開口し,引張力がゼロとなった時点で閉口する.

   (2) 疲労き裂は先端に形成された塑性域内を進展するので後方に引張りひずみが残留するが,このひずみがき裂開閉口挙動に影響を及ぼすことはない.

   (3) 有効応力拡大係数範囲ΔKeffは,応力拡大係数の最大値Kmaxとき裂開閉口時の応力拡大係数Kopを用いれば,ΔKeff= Kop- Kmaxと定義される.

   (4) き裂進展速度を有効応力拡大係数範囲ΔKeffで整理すれば,応力比に影響されない.

   (5) き裂閉口のメカニズムは,塑性誘起き裂閉口と参加物誘起閉口のみである.

 

【問23】引張強さsB800MPaの合金鋼で製造された環状V型切欠き付丸棒に、回転曲げ負荷が107回以上作用する場合、公称応力振幅は最大何MPaまで許容できるか? 正しいものを下記の(1)(5)より選択せよ。なお、疲労限度のデータは与えられておらず、引張強さから疲労限度を推定して許容応力を算出せよ。

 ここで、環状V型切欠き付丸棒の切欠き係数b 2.2とし、寸法効果による疲労限度の低下率 z10.95、表面性状による疲労限度の低下率 z20.9とする。また、作用応力に関する安全率 fs 1とし、疲労限度に関する安全率 fm 2とする。 

 

(1)  38.9MPa

(2)  77.7MPa

(3)  81.8 MPa

(4)  86.4MPa

(5)  90.9MPa

 

 

 

 

 

【問24】 フレッティング疲労の影響因子の組合せとして不適切なのは、次の内のいずれか。その番号を示せ。

 


(1)  機械的因子−摩擦係数

(2)  材料因子−試験材の材質

(3)  材料因子−相手材の材質

(4)  荷重条件−面圧

(5)  化学的要因−雰囲気